◆かつての恋

既婚者に騙された話。3

どうも、アキラです。

 

こちらの記事の続き。

Aが既婚者と知りながら、泊まりの東京へ付き合うことにした私。

その時の私の気持ちをはっきりと思い出せないけれど、
何だろうな。
もっと知りたかった。

人目を気にせず過ごせる場所でのAを見たかった、ような感覚だった気がする。

行きの新幹線からすでにAは手を繋いできた。
これから起こることに胸を弾ませているのが伝わってくる。

 

私は・・・

すごく冷静。

感情はもちろんあるけれど、
大好きな人と楽しい旅をこれからするという感覚は無かった。

 

昼間はAの仕事があったのでその間私はブラブラと時間を潰し、
合流してから、映画を観た。

その時に観た映画は、「ムーランルージュ」

 

それは 私の最も好きな映画の一つになったけれど

その世界観と俳優陣の演技力。
特にトレインスポッティングの印象が強かったユアンマクレガーが
歌唱力も素晴らしく、作家希望の青年クリスチャンを見事に演じていたところ。

ニコールキッドマンの透けるほどの白い肌と完璧で儚い美しさも加わって
最初から最後まで素晴らしかった。

 

隣で観ていたAも、すごく感動していて。

でもそれは違う理由からだった。

「彼らは僕たちそのものだね」と言ったから。

 

ムーランルージュの主役2人と私たちなんて
似ても似つかない。

 

あなたは見た目も良く、パートナーと出会い、
子供も授かり、何不自由ない生活をしている。
その上で今、私と東京に来ている。無責任に私を抱くために。

それを叶わぬ恋・許されぬ恋 のように美化したり、
刹那に酔うことを楽しんでいるだけ。

 

これは恋でも愛でも何でもない。

 

地元ではいつも少し離れて歩いていたAが
私の手を決して離そうとせず
堂々とデートをし、同じ部屋へと入る。

大好きな人であれば、この忍ぶ関係さえも幸せだと感じるのか。

それまでAを魅力的だと感じたり、会いたいと感じていた気持ちが
サーっと冷めて行くのを感じた。

 

私は。

当然のように覆いかぶさって来たAを止め、
納得がいかない様子のAに「できないわ。」とだけ伝え

肉体関係は持たずに次の日の新幹線で戻った。

 

私にとって、やはり、
自分のテリトリーを守りながら、
自分は何の痛い目も見ず、
欲しいものを欲しいままに手に入れようとする男は
愛せなかった。

 

どんなに魅力的な人であろうとも、
パートナーがいるという状態で口説かれるとか
ほんまにありえへんな、と。

この時、改めて思った。

 

むしろ 「どんなに魅力的でも」と書いたけど
実際は自分をセカンド扱いしてくる男性を魅力的だと感じることは皆無。

 

プライド無くして自分は存在しえない。

 

その後、Aは何度か店に来て、
最終的にこんなことを言った。

「子供さえいなければ、本気で別れたいと思う。」と。

 

もう何も言うまい。

 

あなたが奥さんと別れたら
自動的にあなたは仕事を失うし、
全てを失うことになるのに、何を言ってるんだろう。

「子供がいなければ」って子供がいるんやから別れる気はないわけで。
そもそも、そんなこと口に出すとかありえない。

 

当時私は22才とか若かったけど、
ちゃんとわかってたな。

結ばれない忍ぶ恋をスパイスに
彼らはこれからも何ら変わらず平和な日常も決して手放さない。

 

気高く生きよう。

消耗される恋愛なんて、まっぴらだ。

 

 

私は深く深く、とんでもなく深く愛するし、
その見返りを求めないなんてありえない。

求めて当然だ。

愛は一方的には成立しない。

その度合いやタイミングや表現方法が違っても
相手の目に映る人間は私だけでいい。

 

 

恋は人を盲目にして、頭では分かっていても
心がついていかないことなんて勿論ある。

でもどんな時でも根底は常に
気高くいる。それに尽きる。

 

 

あれから20年弱が経ち。

Aの会社は今や誰もが知る一流のものに成長し、
Aは代表取締役になった。

 

あの時、つまらない一時の感情で
大切なものを捨てるなんて選択肢を選ばなくて正解だ。

子供も成人しただろう。

 

 

ホテルで鏡に映る自分の姿を見て、
「俺、老けたなぁ・・・」

聞こえないぐらいの小さな声でAは呟いた。

 

なぜかいつも思い出すのは、その時の顔。

 

 

 

あの恋愛からも学んだことは沢山ある。

無駄なことなど、何ひとつ ないのだ。

 

 

A、幸せでいてね。

ありがとう。

 

 

 

POSTED COMMENT

  1. より:

    恋愛体質というか、熱しやすく冷めやすい私も、そこは踏み入れなかった世界。。
    「既婚者」と知ると、男でも女でもなく、「人」にしか見えなくなってましたね。
    いま自分が「既婚者」になって、W不倫するかといったら、そこも興味がなく。。
    お互い独身で自由で色んな可能性があるなかで、お互いを選んだよ、という土台の上に成り立ってるからこそ、恋愛の価値があるなぁ、という感覚です☺️
    ここしかないから、ていう恋愛はなんか、、安っぽい、、自分の価値が下がる、ていう感覚かな、て☺️

    • akira. より:

      >凪さん

      絶対それが良いです。
      本当に先に何の幸せもない。
      全く共感です、男性でも女性でもなく、「人」ですよね。
      尊重するし、共有するものがあれば普通に接するけど、恋愛へシフトは皆無。

      まぁでもこればっかりはそれぞれの価値観ですもんね。
      そして価値観の似た者同士が引き合う。

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